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Tension (1949)

Tension (1949)

Warren Quimbyになりたい!

 Repeat Performance (1947) <恐怖の一年> で鮮烈な映画デビューを果たし、He Walked by Night (1948)『夜歩く男』でハリウッド映画界に衝撃をもたらした Richard Basehart を MGM が20世紀フォックスから借り受けて(その為に Audrey Totter のクレジットは二番目になってしまいました)製作した Murder Drama 殺人劇です。
 Basehart と Audrey の素晴らしさは他のどの映画でも変わりがないのですが、わたし的には何と言っても Cyd Charisse の美しい肢体と激情演技、そして William Conrad の小芝居が、もう身悶えするほど楽しくて楽しくて仕方ないのです。

 物語は定石通り、殺人課警部補 Collier "Collie" Bonnabel (Barry Sullivan) の前説/ナレーションで幕を開けます。輪ゴムの大きいのを引っ張りながら得意気に自説を開帳する Collie。演じる Barry Sullivan は Basehart と対照的な“浅黒い長身ハンサム”さん。この配役の意味は後で判ります。

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 24時間営業ドラッグストアの雇われ夜間店長 Warren Quimby (Basehart) は美人巨乳妻 Claire (Audrey) に夢中。旦那が夜勤なのを良い事に他の男と夜遊びし放題でも、彼女に懸命に尽くします。自分が一晩中働いてどれだけ疲れていても、遊び歩いていた妻のために朝食を作ってベッドへ運んであげる健気な男。しかもトーストが焦げていると文句を言われてしまう可哀想な男。常に Claire が出て行ってしまうのではないかと恐れています。
 そして遂に、彼の不安が現実となり Claire はより金回りの良い酒卸業の男 Barney Deager (Lloyd Gough) のビーチハウスへ移り住んでしまいます。妻を諦めきれない Quimby は Deager の元へ押しかけますが、あっさりと叩きのめされ這う這うの体で帰る事に。心身ともに傷ついた彼の怒りは Deager への殺意にまで発展してしまうのでした。

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 さて、どうやって完全犯罪を行うか?- Quimby の計画は架空の男 Paul Sothern を作り上げ、彼を殺人犯に仕立てる。というものでした。Clark Kent がスーパーマンに変身するかの如く、眼鏡をはずしコンタクトレンズを装着。服装を変え、化粧品セールスマン Paul Sothern として住む場所も確保します。着々と計画を実行する彼。しかし思い掛けず、そのアパートの住人 Mary Chanler (Cyd) と親しくなります。凄い美人でスタイル抜群で性格が良いという三拍子揃った Mary。しかもPaul = Quimby に真底惚れているという、超美味しい展開に。
 Mary を愛おしいと想いながらも男の意地と誇りを賭けた復讐心は消えず、Quimby は遂に Deager の心臓を一突きにしようと銛 (ビーチハウスなので。そして Deager にコテンパンに伸された際、追い打ちでこの銛を突き刺されそうになったのです) を振り上げた…のですが、ふと冷静になり、Claire などどうでも良い、あんな女は熨斗つけてこいつにくれてやる!と目が覚めます。
 死の淵から生き返ったようにハッピーな気分で、♪フンフンフン~♪と Mary との輝く未来に想いを馳せながら髭剃りしている Quimby。と、なんとそこに Claire が戻ってきます。Deagerが殺された。と言う衝撃のニュースと共に。
 果たして犯人は誰なのか? って、もう決まっていますが、まぁそれは置いといてですね。ここでナレーターの Collie が相棒 Edgar Gonsales 警部補 (Conrad) を伴って Quimby と Claire の住むアパートへ訊き込みにやってきます。

 ここから Conrad の登場場面はすべて小芝居の嵐! 実際の彼の自然な演技と違って、劇中 Gonsales が演技する Collie と彼の "Good Cop & Bad Cop" お芝居がこれまた、サイコーッ!なのです。そして Gonsales のキャラ設定は “メタボな警部補”。“身体に悪いと分かっちゃいるけど、好きな物を食べるのを止められない俺”。
 ラジオ全盛時代に大活躍、後にTVでも大人気となる Conrad は言わずと知れたノワール草創期傑作 The Killers (1946)『殺人者』 で題名である殺し屋の一人を真正ノワール侍 Charles McGraw と共に演じ、その他数々のフィルム・ノワールに出演。物語的にどうでも良い役でありながら、常に新鮮で現実感のある役作りをし、作品に深みを与えてくれる我が偏愛のノワール侍なのです。この作品でも彼の一挙手一投足から目が離せません。背景でしかない何気ない場面でも常に小芝居をしている Conrad により、Gonsales 警部補が堪らなくキュートに見えます。
 ちなみに...何度も彼を観ていてふと、Gonsales 警部補って誰かに似てない? ...あっ、Dexter (2006-2013) <デクスター 警察官は殺人鬼> の Angel Batista (David Zayas)! と気づきました。そう思ったら、Richard Basehart の Dexter Morgan が観たいぃ~っと妄想が広がってしまうのでした。でも Conrad の Enrique Morales (Oz (1997–2003) <OZ/オズ> で David Zayas が演じたラティーノ・ギャングのボス。もちろん劇中で全裸シーンあり)はちょっと遠慮したいです...。

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 この作品のもう一つの見所は、Cyd Charisse。彼女もまた、我が偏愛の女優でありまして、所謂純粋なフィルム・ノワールへの出演はこの作品のみなのですが、超有名な Singing in the Rain (1952)『雨に唄えば』The Band Wagon (1953)『バンド・ワゴン』 における、それぞれの劇中劇 "Broadway Melody"、 "Girl Hunt Ballet" での忘れ難いファム・ファタール、そして Nicholas Ray のノワーリッシュ・メロドラマ Party Girl (1958)『暗黒街の女』 におけるダンサー Vicki Gaye と、強力なノワール・コネクションのある御方なのです。
 Cyd と彼女の夫君 Tony Martin の自伝 Two of Us (二人の語りを Dick Kleiner が書き起したもの) ではこの作品の事はただ一行 "In Tension, I played a reporter with Richard Basehart, a fine actor, and Audrey Totter." とあるだけで、しかも彼女の役は “リポーター” ではありませんから、ほとんど記憶に残っていなかったと思われます。それでも Basehart に対し、わざわざ “素晴らしい俳優” と付け加えたという事は、誰が観ても Basehart の演技が本当に素晴らしいからに他なりません。
 一方、“素晴らしいダンサー”ではあっても、“素晴らしい女優”と言うには少し躊躇いがある Cyd ですが、この Mary Chanler という<真っ直ぐで一途な正統派ヒロイン>にピタリと嵌って、これがもうどうにも堪らなく好いのです。また、金髪あっさり系端整顔の Basehart と 黒髪こってり系彫の深い顔の Cyd との絵的コントラストもかなりぐっときます。
 Mary と Quimby との出逢いの場面での Cyd のくびれた腰を BaseHart の(脱いだらスゴイんです、俺)剛腕が抱きとめるところと、Quimby が Paul Sothern と判ってしまう場面、その後の緊張感溢れる密会のような場面。それらは Conrad の出演シーンと同様、何度も観ても見飽きません!

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左から Warren Quimby (Basehart)、Gonsales 警部補 (Conrad)、Collie Bonnabel 警部補 (Sullivan)、Claire (Audrey)、Mary (Cyd)

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