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Sunset Blvd.

Sunset Boulevard (1950)『サンセット大通り』

猿の代替品

 猿がプロットとしてこれほど有効に使われている映画は(猿の惑星シリーズを除いて)他にないと思います。そしてまたそのブラック度は、この作品が映画史上完璧な映画の一つである、という誰もが認める事実を踏まえると、より悪辣で痛烈なものと感じます。

SunsetBlvd

 この作品を初めて観たのは中学一年か二年の時、名画座でなのですが、まだ<フィルム・ノワール>という言葉を知らず(もちろんもし知っていたとしても、この作品がノワールだとは考えもしなかったと思いますが)また、この作品が<ブラック・コメディ>である事をまったく理解しておりませんでした。
 当時は Billy Wilder 監督作品が Jean-Luc Godard 監督作品とならんで一番頻繁に名画座で上映されており、かつ和田誠氏の『お楽しみはこれからだ』で絶賛されていたものですから「是非観なければ」と意気込んで観たのです。
 感想は...「なんてイヤな映画なの。観なきゃ良かった」と後悔しました。子供でしたからね。<黒い笑い>が後味の悪い物でしか無かったのです。主要登場人物の誰にも思い入れを持てず、大好きな Erich von Stroheim も逆に好きだからこそ、Max を観るのが辛かったのです。

 時は流れてレーザーディスクの時代。再見して爆笑しました。「これほどに笑える映画だったとは!」そして最後の Stroheim の“偉大な監督”ぶりと Norma Desmond(Gloria Swanson)が Max なのに "All right, Mr. DeMille, I'm ready for my close-up." と言う強烈なダメ押し、それに続く女優魂炸裂の表情にわたしは全身総毛立ちました。

 恐るべし Billy Wilder、Charles Brackett、Gloria Swanson。

SB2

 初めてこの作品を観てからずっと変わらないのは Artie Green (Jack Webb) への同情です。
 キャラ設定が可哀想過ぎるでしょう。まぁ、こういうタイプの人は必ずどこの世界にも居るとは思いますが、主要登場人物の中で一番まともであるだけに余計に見るのが辛いです。
 人間は素晴らしく良いのですが、監督としての才能は“そこそこ”。結局鳴かず飛ばずで、低予算の西部劇数本でお茶を濁し、その後はTV 監督として名も無き生涯を終えるんだろうなぁ...と観る者をして容易に想像させてしまうキャラなのですよね。ホント、Wilder と Brackett の悪意ときたら、徹底してます。

  • 妄想劇場
     Jack Webb の脳内妄想炸裂映画として我が偏愛の一本である Pete Kelly's Blues (1955)『皆殺しのトランペット』を観た後、わたしの中で Jack Webb と Artie が真底被りました。
     “いい奴” Artie の脳内でも Pete Kelly の構想が渦巻いたのでしょう。
    「いつか、俺はこういう<男の夢>映画を撮るぞ! しかも主演は俺だ! 相手役は絶対に巨乳美人女優! タフガイ俳優もぶっ倒してやる! そして俺のために Peggy Lee と Ella Fitzgerald を唄わせてやるんだ!」...夢が叶って良かったですね。
  • Eddie の豆知識
     Wilder と Brackett がハリウッドのレストランで、ある映画会社の重役と食事をしていた際、店と揉めていた老人が店から追い出される場面に遭遇しました。老人は大声で「貴様ら俺を誰だか知らないのか?! 俺がこの町を造り上げたんだぞッ!!」と捨て台詞を喚いていたので、その重役が「今のが誰だか知ってるかい?」と二人にたずねます。「D.W. Griffith だよ」
     そしてそれから間も無く、Griffith の訃報とそのお葬式には極僅かな参列者しかいない寂しいものだった事も彼らは知りました。
     それら一連の出来事が彼らにこの映画を作るきっかけを与えたそうです。

Joe Gillis: "You used to be big."
Norma Desmond: "I am big. It's the pictures that got small."

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